わたしの「リアル」あなたの「リアル」
一般に、リアルな絵画といえば写真のような絵を思い浮かべる人が多いはずです。普段、私達の目に映る現実がそっくり再現されているのだから、そう考えるのは自然なことでしょう。しかし、ふな美の経験を通して、実はそれだけじゃないんじゃないかと思うようになりました。私の好きな中世の東方正教会のイコン画は、厳密な規定により、聖人たちや天使たちは皆一様の表情を浮かべ俯いた姿で描かれ構図さえパターン化されています。いわゆる写実とは乖離していると言わざるを得ない感じです。しかし当時の人は様式化されたそれを聖なるものと心から信じ、その向こうにキリストや聖母を見た。彼らからすれば何よりもそれが「リアル」だったのだと思います。そんな風に「リアル」って案外フワフワしていて、人の数だけあるもののような気がします。どんなに何気ないことでも、あなたが心で感じたことはあなたの「リアル」に違いなく、そしてそれは他の何より大事なものなのではないでしょうか。